2025/12/15
クリニックの組織を強くする人事評価制度
クリニックの人事評価制度が組織を強くする理由
クリニックでスタッフが定着し、組織として成果を出すためには、人事評価の仕組みが不可欠である。しかし、現場では「人事評価」と「人事考課」が混同されることが少なくない。言葉は似ているが、目的は大きく異なる。この違いを理解せずに制度を導入すると、スタッフに誤解が生まれ、制度自体が機能しなくなる。
人事評価と人事考課の違い
人事評価(成長支援としての評価)
人事評価とは、スタッフの成長を支えるための評価である。能力向上、キャリア形成、配置転換の検討、モチベーション向上など、人材育成全般に関わる。業績だけでなく、意欲や行動特性、協調性、360度評価など、多角的に成長の材料を扱う。給与や役職の話は含まれず、あくまで育成が主目的となる。
人事考課(処遇決定のための評価)
一方、人事考課は給与や役職の決定を目的とする評価である。昇給、賞与、昇進・昇格など、処遇を決定するために、業績・能力・勤務態度を評価基準に沿って採点する。処遇決定が主目的であり、厳格な評価が求められる。
整理すると
- 人事評価=スタッフの未来を伸ばす評価
- 人事考課=給与や役職を決める評価
混同するとスタッフは「結局お金の話だけ」と感じ、成長実感を持てなくなる。制度の目的を明確化し、運用を整理することが組織風土の強化につながる。
納得される評価制度のポイント
1. 手続きの透明性
評価では結果よりも、決定プロセスの透明性が重要である。評価基準の設定方法、判断者、修正可能性を明示することで、スタッフの納得感が高まる。
2. 日常的なコミュニケーション
賞与前だけの面談では、スタッフの不満を招きやすい。日常的に仕事ぶりを確認し、対話を重ねることで、面談は単なる確認作業として自然に行える。
3. 報酬の理由付け
報酬額そのものよりも、評価の理由を明確に伝えることが重要である。具体的な成果や行動を示すことで、納得感とモチベーションの向上につながる。
4. 数値だけでなく行動も評価
クリニックの仕事は数字だけで測れる成果に偏らない。患者対応の丁寧さ、柔軟な対応、チーム連携など目に見えない行動が評価の本質である。数字のみの評価は不公平感や離職リスクを生む。
5. 無意識の偏りを抑える
少人数の職場では、評価に無意識の偏りが入り込みやすい。完全排除は困難だが、偏りに気づき修正できる仕組みを持つことで公平性を担保できる。
6. 過去の裁きではなく未来の伴走
スタッフが評価に不満を抱く主な原因は、点数ではなく「普段見てもらえていない孤独感」にある。面談では、行動の背景を確認し、未来の行動に変換し、小さな成長を認めることが重要である。評価は過去を裁くものではなく、未来をデザインする時間である。
最後に
クリニックの人事制度は、完成度よりも日々の運用が組織を強くする。
- 手続きの透明性
- 日常的な対話
- 評価・報酬の理由付け
- 偏りを修正する仕組み
- 面談が未来につながること
これらを日常に根付かせることが、スタッフの定着と成長を促し、院長とスタッフの信頼関係を築く。制度を作るだけでは組織は変わらない。運用が習慣として根付いたとき、初めて組織は強くなる。
この記事を監修した人
浅見 允文
16年以上にわたり人事・組織運営支援の分野で実務経験を積み、年間110件を超える医療法人および個人開業医からの支援要請を受ける、株式会社ジムチョーの創業者。事務長代行・事務代行といった実務支援に加え、診療所経営における人的資源管理、業務設計、運営体制の最適化に関する高度な知見を有する。中でも、管理職層・事務長層を対象とした育成・研修においては高い評価を得ており、組織基盤強化と持続的発展に資する中核人材の育成に継続的に取り組んでいる。
