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管理医師の常勤性を誤解すると危ない理由

2026/02/24

管理医師の常勤性を誤解すると危ない理由

管理医師の「常勤性」は、勤務時間で決まるものではありません
管理医師の常勤性については、「週に何時間勤務していれば常勤といえるのか」
という質問を受けることが少なくありません。
しかし、この理解は実務上、必ずしも正確とは言えません。
このコラムでは、管理医師の常勤性について「時間数」ではなく「体制」という視点から整理します。

1.管理医師の常勤性の基本的な考え方

まず前提として、管理医師の常勤性について
厚生労働省等は次のような趣旨の説明をしています。

「管理者が診療時間中に当該診療所以外の場所で勤務、又は在宅診療を行っている場合であっても、当該診療所の従業者と携帯電話等により常時連絡が取れる体制を確保し
事故等の緊急時に速やかに当該診療所に駆けつけ、又は適切な指示を行える体制が整っている場合には、診療所の管理に支障がないものとして差し支えない」

重要なのは、「診療時間中に何かあった際に、管理医師として適正な指示・判断が即座にできる体制が確保されているかどうか」です。
単に院内に物理的に滞在している時間の長短が、常勤性を決めるわけではありません。

2.「○○時間勤務=常勤」という考え方の誤解

このように常勤性を捉えた場合
「○○時間働いていれば常勤性を満たす」と一律に判断することはできません。

例えば
・毎日8時間診療を行っているクリニック
・管理医師は週40時間勤務している
・しかし、診療日に1日だけ別の医療機関でアルバイトをしている

この場合、形式的には「40時間勤務」していても、診療時間中に別の場所で勤務している以上、「緊急時に即応できる体制」とは言い難く、常勤性を満たしているとは評価されにくくなります。

なお、「週32時間以上勤務していれば常勤医師として扱われる」という考え方は
立入検査に関する要綱の中で「病院に勤務する医師」の常勤性判断に関して示されている説明を根拠にしたものです。
ただし、これはあくまで「病院勤務医」に関する基準であり、「管理医師の常勤性」の解釈に直接影響するものではありません。

そのため、勤務時間数は「判断材料の一つ」ではあっても、「決定的な基準」ではないと考えるのが実務的です。

3.管理医師は診療に従事していなければならないのか

では、管理医師が必ず診療に従事していなければ、常勤性は否定されるのでしょうか。

の点についても、常勤性を「体制」で捉えるならば、診療に直接従事しているかどうかは、直ちに常勤性の有無を左右するものではありません。

重要なのは、・診療時間中に管理運営上の適切な指示が出せること・事故やトラブル発生時に、迅速な判断・対応ができる体制があることです。

実際、大規模な病院において、院長が常に診療に従事しているとは限りません。それでも管理医師としての常勤性が否定されないのは、この「管理体制」が確保されているからです。

同様に、診療日に管理医師が休んでいる=直ちに常勤性を欠く、という結論にもなりません。

もっとも
・医師が一人しかいない医療機関
・管理医師がほとんど診療に関与せず、診療を非常勤任せにしている

といったケースでは、その実態が「常勤性の趣旨に沿っているのか」という点で、実務上疑義が生じやすくなります。

まとめ

管理医師の常勤性は、「何時間働いているか」ではなく
「診療時間中に、管理医師として責任ある判断・指示・対応ができる体制が整っているか」という視点で判断されます。

勤務時間数や診療への関与は重要な要素ではありますが、それだけで結論が決まるものではありません。
管理医師の常勤性を考える際には、「体制」「実態」「緊急時対応力」という3点から、総合的に整理することが重要です。

この記事を監修した人

長谷川 真也

医療分野を専門とする行政書士として、医療法人の設立、移転、承継、組織再編といった複雑かつ多岐にわたる法務・行政手続に精通。豊富な現場知識と緻密な制度理解を活かし、単なる手続代理にとどまらず、戦略的視点を取り入れた法務コンサルティングを提供している。診療科や規模を問わず幅広い医療機関の支援実績を有し、医師や医療従事者との信頼関係を礎に、医療経営の健全化と発展に貢献している。

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