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クリニック閉院時に伴う内装費用の注意点

2025/12/10

クリニック閉院時に伴う内装費用の注意点

~「思ったより費用がかかった」を防ぐために~

はじめに

クリニックの閉院は、開業以上に慎重な準備が求められるプロセスです。

特に、退去時の内装費用(原状回復・撤去・処分費など)は想定以上に高額になることが多く、経営の最終段階で大きな負担となるケースもあります。

本コラムでは、院長が閉院を検討する際に押さえておくべき内装費用の実務ポイントを、契約・工事・スケジュールの観点から整理します。

1. 原状回復義務とは? まずは賃貸契約の確認から

クリニックが賃貸物件の場合、閉院時には原状回復義務が発生します。

これは「借りたときの状態に戻して返す」義務を指しますが、医療機関の場合は通常のテナントよりも負担が大きくなる傾向があります。

医療テナントが特に費用を要する理由として、給排水設備や医療用ガスなど特殊設備の撤去、床や壁を貫通した配管工事の解体、空調・電気系統の独自改修による共用部復旧などが挙げられます。

一般的に、医療テナントの原状回復費用は坪あたり5~10万円前後が目安ですが、仕様や構造によっては坪15万円を超えることもあります。

2. 内装撤去費用の内訳を理解する

「内装費用」とひとことで言っても、その中身は多岐にわたります。

以下のような項目を整理しておくと、見積比較がしやすくなります。

・解体撤去費:壁・天井・床・間仕切りの撤去(スケルトン返しが原則)
・設備撤去費:給排水・電気・空調・医療ガスなどの撤去(専門業者対応が必要)
・廃棄物処理費:医療機器・什器・残置物の処分(医療廃棄物は分別ルールあり)
・復旧工事費:共用部や建物の原状復旧(オーナー指定業者のケースも)
・仮設・養生費:工事中の騒音・粉塵対策(ビル規定に準拠)

見積書では「一式」と記載されることが多いため、項目ごとに明細を出してもらうことが重要です。

特に「設備撤去費」は追加請求が発生しやすいので注意しましょう。

3. 保証金・敷金との関係を整理しておく

退去時の原状回復費用は、保証金(または敷金)から差し引かれるケースが一般的です。

しかし、「保証金で全て賄える」とは限りません。

契約書に「原状回復費は実費精算」と明記されている場合、追加支払いが必要になることもあります。

スケルトン返しが義務の場合、保証金を超える費用負担が発生することもあります。

例えば、保証金300万円でも、解体費が400万円かかれば差額100万円の支払いが必要です。

閉院を見据えた資金計画では、保証金=費用上限ではないと認識しておくことが大切です。

4. 閉院スケジュールと工事時期の関係

閉院が決まったら、早めにスケジュールを逆算して計画を立てましょう。

内装撤去工事には見積・承認・解体・確認といった複数工程があり、想定以上に時間がかかることがあります。

<一般的なスケジュール例>
・3〜6か月前:賃貸契約の解約予告、閉院日決定
・2〜3か月前:内装撤去業者選定、見積取得
・1〜2か月前:工事実施・現地確認
・閉院後:最終立会い・原状確認・保証金清算

医療機器の撤去や医薬品廃棄も時間を要するため、医療廃棄と工事を同時進行できるように調整することが理想です。

5. コストを抑えるための工夫

閉院時の内装費用を少しでも抑えるためには、次のような工夫が有効です。

・複数業者に相見積もりを取る(医療系専門業者を含む)
・再利用可能な設備は譲渡・売却する(後任テナントへの引き継ぎ)
・撤去範囲を交渉し、一部残置を認めてもらう
・繁忙期(3月・9月)を避けて工事を行う

また、後任の医師が同物件を引き継ぐ場合、「居抜き譲渡」という選択肢もあります。

この場合、内装を残したまま譲渡できる為、撤去費用が不要になる事もあります。

6. まとめ ― 閉院費用は「出口戦略」の一部

クリニック閉院時の内装費用は、開業時には意識されにくいものの、経営を締めくくる重要なコストです。

契約書や保証金、工事条件を早めに確認し、余裕を持った計画を立てることが円満な閉院の第一歩です。

閉院は終わりではなく、次のステップへの準備です。

余裕あるスケジュールと専門家への早期相談が、経営をスムーズに締めくくる鍵となります。

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