2025/12/01
分院開業を成功に導く12か月スケジュールモデル
〜時間設計が生む、余裕ある開業〜
分院開業は、単なる「もう一つの医院をつくる」ことではありません。
それは、既存院を維持しながら、新たな医療拠点を立ち上げるという複層的なプロジェクトです。
限られた時間の中で意思決定・調整・準備を並行して進める必要があり、スケジュール設計の巧拙がそのまま成功を左右します。
本コラムでは、分院開業を検討している院長に向けて、1年前からの時系列モデルをもとに、無理のない開業準備の進め方を解説します。
■ 全体像:分院開業12か月モデル
| 時期(目安) | 主なタスク | 院長の重点行動 | 備考 |
| 12〜10か月前 | 開業目的の整理、既存院の安定化策、候補エリアのリサーチ | 分院の「存在意義」を明確にする、スタッフ体制の見直し | 経営理念・方向性を言語化する時期 |
| 9〜8か月前 | 資金計画・融資方針の検討、設計・施工会社の選定候補リストアップ | 金融機関や建築業者との初回面談 | この時点で「外部チーム」の形成が始まる |
| 7〜6か月前 | テナント・土地契約、基本設計図の作成、概算見積と調整 | 設計会議の最終判断者として動く | 設計・設備方針を固める大切な時期 |
| 5〜4か月前 | 工事契約の締結、保健所・行政手続き準備、採用募集開始 | 採用面接・求人原稿の最終確認 | 人材確保を早期に始めるのが成功の鍵 |
| 3か月前 | 内装工事スタート、医療機器・什器の発注確定 | 現場定例会に参加、意思決定を迅速に | 工期短縮や変更に即応できる余裕を確保 |
| 2か月前 | スタッフ研修開始、広告・内覧会準備、開業届等の行政手続き完了 | オペレーションマニュアル整備 | 現場確認より“運営準備”が中心に |
| 1か月前 | 機器搬入・検査、内覧会開催、プレオープン運営確認 | 最終動線チェックとチーム最終共有 | 想定外対応に備えた余裕を確保 |
| 開業直後(初月) | 実運営スタート、課題抽出・改善ミーティング | 「完璧」よりも「改善」を優先 | 初月は“学びの期間”として設計する |
■ ステージ別ポイント解説
① 構想期(12〜9か月前)
まず取り組むべきは、「なぜ分院をつくるのか」という目的の明確化です。
患者数の飽和、エリア拡大、スタッフのキャリア継承など、目的によって戦略は大きく変わります。
この段階では、既存院の診療効率と人員体制を見直し、“院長が不在でも回る体制”づくりを始めておきましょう。
分院準備にかける時間は、必ず既存院の運営に影響します。
1年前からの仕込みが、後半の余裕を生みます。
② 計画期(9〜6か月前)
候補地が固まり、設計・施工・融資などの現実的な調整が進む時期です。
ここで重要なのは、「誰と、どの順序で」決めていくかを整理すること。
会議や打ち合わせが増えるため、1週間を「情報収集日」「意思決定日」「報告日」に分けておくと効率が上がります。
設計会社との対話は、開業後の動線や人件費に直結するため、じっくり時間を取る価値があります。
“時間をかけるべき判断”と“早く委任できる判断”の線引きを意識しましょう。
③ 施工・準備期(6〜2か月前)
工事が始まると、日々の進行確認と並行して、採用・教育・広報・行政手続きが動き出します。
この時期は、優先順位とタスク管理が命綱です。
おすすめは、曜日ごとにテーマを分けた「週次進行表」をつくることです。
月曜:現場報告確認
火曜:採用・面接対応
水曜:業者・広告打合せ
木曜:スタッフ研修
金曜:事務処理・決裁
土曜:既存院フォロー
すべてを自分で抱え込まず、現場確認は写真や報告書ベースで行い、必要な場面にのみ立ち会う形にすることで、限られた時間を有効に使えます。
④ 開業直前・オープン期(2か月前〜開業後)
開業前は、チームの最終仕上げ・内覧会準備・広報対応などが集中します。
この時期の鉄則は、“予定通り進まないことを前提にスケジュールを組む”こと。
余裕日(バッファ)を設定しておくことで、想定外の遅れにも冷静に対応できます。
開業後1か月間は「業務改善期間」として捉え、トライ&エラーを許容する姿勢が大切です。
「完璧な開業」より、「柔軟に立ち上がる開業」を目指しましょう。
■ スケジュールは「時間」ではなく「余裕」で設計する
分院開業で多くの院長が実感するのは、「想像以上に準備が時間を取る」という現実です。
だからこそ、スケジュール設計の目的は“時間を詰め込むこと”ではなく、“余裕をつくること”にあります。
判断を1週間早めれば選択肢が広がり、打ち合わせを1時間短縮すれば現場確認の時間を生み出せます。
余白のあるスケジュールこそ、安心と精度をもたらすのです。
<まとめ>
・分院開業は「思い立ったら動く」ではなく、「余裕をもって設計する」ことが鍵。
・開業の12か月前から目的・体制・スケジュールを順序立てて準備する。
・余白のある計画が、チームの連携力と安定したスタートを生む。
——時間を味方につける開業こそ、成功する分院経営の第一歩です。
