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分院展開でスタッフが離職する本当の理由

2026/02/26

分院展開でスタッフが離職する本当の理由

拡大が「組織のひずみ」を生む瞬間

分院展開は、クリニックにとって成長の象徴です。
売上が伸び、患者数が増え、組織が拡大していく。外から見れば順調そのものに映ります。

しかし現実には、分院をきっかけにスタッフの離職が増えるケースが少なくありません。
しかも退職理由は「家庭の事情」「キャリアの見直し」など、表向きは穏やかです。

本当の理由は、もっと構造的なところにあります。

1.“置いていかれる感覚”が生まれる

分院が決まると、経営陣の関心は新拠点に向きがちです。
物件、採用、内装、融資――院長の時間とエネルギーは大きく割かれます。

その間、本院のスタッフはどう感じているでしょうか。

・最近、院長と話す機会が減った
・相談しても返答が遅い
・方向性が見えない

この「置いていかれる感覚」が、不安を生みます。
人は環境の変化よりも、“説明の不足”に不安を感じます。

2.評価と役割が曖昧になる

分院展開では、役職や配置転換が発生します。

・誰が分院に異動するのか
・分院長の権限はどこまでか
・本院の責任者は誰か

この設計が曖昧だと、不公平感が生まれます。

「なぜあの人が選ばれたのか」
「自分のキャリアはどうなるのか」

評価基準が言語化されていない組織ほど、拡大時に不満が表面化します。

3.院長依存型からの急転換

これまで院長がすべてを決めていた組織が、突然「任せる経営」に切り替わる。
これはスタッフにとって大きなストレスです。

分院展開を機に

・急に裁量を求められる
・責任が増える
・相談先が曖昧になる

準備なく自立を求められると、人は不安を感じます。
組織の変化スピードと、スタッフの心理的準備が合っていないのです。

4.業務負担の増加

分院準備期間は、本院の業務が一時的に増えます。

・採用面接のサポート
・マニュアル整備
・教育体制の再構築

しかし、その努力が評価や待遇に反映されなければ、「負担だけが増えた」と感じてしまいます。

拡張期は、最も疲弊しやすい時期です。

5.理念が共有されていない

分院展開が成功するかどうかは、理念の浸透度で決まります。

「なぜ分院を出すのか」
「組織はどこを目指しているのか」

この問いにスタッフが答えられない場合、拡大は単なる経営者の野心に見えてしまいます。

共感なき拡大は、離職を生みます。

本当の理由は“拡大”ではない

スタッフが辞める原因は、分院そのものではありません。

・情報共有不足
・評価基準の不透明さ
・役割設計の曖昧さ
・心理的安全性の低下

つまり、組織設計の問題です。

分院は、そのひずみを可視化する出来事にすぎません。

離職を防ぐために必要なこと

成功しているクリニックには共通点があります。

・分院計画を早期に共有する
・役割と評価基準を明文化する
・異動は“選抜”ではなく“成長機会”として設計する
・拡張期こそ対話の時間を増やす

拡大は、組織の成熟度を試す機会です。

まとめ

分院展開でスタッフが離職する本当の理由は、変化そのものではありません。
変化に対する準備と説明が不足していることです。

分院は経営戦略であると同時に、組織改革でもあります。

拡大する前に問うべきは、「この組織は変化を受け止められる状態か」ということ。

そこに目を向けられる院長が、拡張を成長に変えることができます。

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