2025/12/10
分院開業に向いている診療科目とは 〜医療経営の次なるステージを見据えて〜
医療機関の経営環境はこの数年で大きく変化しました。
地域の人口構成や患者ニーズの多様化、デジタルツールの普及、働き方改革による人材確保の難しさなど、クリニック経営には“安定経営”と“成長戦略”の両立が求められています。
こうした流れの中で注目されているのが、「分院開業」という選択肢です。
但し、すべての診療科が同じように分院展開に適しているわけではありません。
本院のリソース・地域の市場環境・患者層との相性を踏まえた“診療科の適性”が、成功の鍵を握ります。
本稿では、分院開業に向いている診療科の特徴と、それぞれの成功ポイントを整理してみましょう。
■ 分院開業が進む背景
分院開業が注目される理由の一つは、経営のリスク分散です。
一拠点に依存する形態から、複数拠点で患者層を広げ、地域医療圏の中で安定した収益を確保する。
また、診療所間で人材・ノウハウ・IT基盤を共有することで、効率的な運営が可能になります。
さらに、医師の働き方改革の流れも追い風です。
分院では若手ドクターや非常勤医師が活躍できる場を設けやすく、「勤務医からのステップアップ」や「女性医師の柔軟な勤務形態」にも対応できます。
しかし、同じ“分院開業”でも、診療科によって成功モデルは異なります。
ここからは、実際に分院展開に向いている代表的な診療科をみていきましょう。
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■ 分院展開に向いている診療科の特徴
分院に向いている診療科には、いくつか共通点があります。
1. 設備投資が比較的コンパクトに抑えられる
2. 地域ニーズが安定している・リピート率が高い
3. 標準化・マニュアル化が可能
この観点で見たとき、特に相性が良いとされるのが、以下の診療科です。
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■ 分院開業と相性の良い主な診療科
① 皮膚科・美容皮膚科
皮膚科は、初診からリピートにつながりやすい診療科であり、地域に根ざした診療モデルが作りやすい領域です。
美容皮膚科を併設することで、保険・自費の両輪経営が可能になり、分院としての採算性も高まります。
また、診療マニュアルの統一がしやすく、医師・看護師・受付スタッフが標準的なオペレーションで動ける点も強み。
電子カルテや予約システムとの相性も良く、DX化による効率運営が進めやすい分野です。
② 内科(生活習慣病・糖尿病・循環器・消化器)
生活習慣病や慢性疾患を中心とする内科は、地域住民の安定した受診ニーズが見込めます。
特に、本院が健診・予防医療を行っている場合、「フォローアップを分院で担う」という形での展開が効果的です。
また、在宅診療・オンライン診療と連携することで、広域的な医療ネットワークを形成できます。
医師数の確保が課題となりやすい点はありますが、本院との医師シフト共有で対応可能です。
③ 整形外科・リハビリ特化型クリニック
高齢化地域では、整形外科とリハビリの需要が安定しています。
特に近年は、リハビリスタッフ主体の運営や、運動療法を中心とした「地域の健康拠点」としての分院モデルも増加傾向です。
リハビリ機器は設置スペースを要しますが、診療内容が明確で差別化が図りやすい点がメリット。
「住宅地立地×駐車場完備」という条件であれば、高い来院頻度を維持できます。
④ 眼科・耳鼻咽喉科
眼科・耳鼻科は、患者数の季節変動があるものの、ファミリー層の受診ニーズが高く、地域密着の分院モデルに適しています。
検査機器やスタッフ教育を標準化できれば、本院同様の診療品質を維持しやすい診療科です。
また、駅近や商業施設内など、立地戦略を重視することで集患効果を高めやすい点も特徴です。
⑤ 小児科・アレルギー科
小児科は地域医療における信頼形成が重要な診療科です。
分院としての展開は、「既存院で築いた信頼を次世代エリアへ広げる」形で効果を発揮します。
特にアレルギー科を併設することで、通年での安定受診が見込めます。
但し、医師・看護師の確保が難しい場合があるため、早期採用・チーム形成が成功の鍵となります。
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■ 分院開業を成功させる3つの視点
1. 「本院との関係性」をどう設計するか
2. 「地域ニーズ」との一致
3. 「人材確保・教育のしやすさ」
分院は独立したクリニックではなく、本院のブランドと信頼を継承する拠点です。
診療マニュアル・カルテ運用・会計処理などを統一し、どの分院でも“同じ診療体験”を提供できる仕組みが求められます。
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■ まとめ:分院とは「拡大」ではなく「再構築」
分院開業を検討する際、つい“拡大”という視点で考えがちです。
しかし実際には、分院とは「本院の理念を新たな形で再構築する場」でもあります。
診療科の選定は、その理念を最も体現できる分野を選ぶことが重要です。
「どの診療科が儲かるか」ではなく、「どんな医療を広げたいか」を起点に考えること。それが、分院経営を長期的に成功へ導く唯一の道と言えるでしょう。
