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クリニックの移転先がなかなか決まらない…

2025/12/03

クリニックの移転先がなかなか決まらない…

― 理想の物件が見つからない院長先生へ ―

「今の場所が手狭になってきた」「建物が古くなってきた」「もっと通いやすい場所にしたい」。

そんな想いから移転を検討し始めたものの、“これだ”という物件になかなか出会えない――。

不動産サイトを見ては条件に合わず、下見をしても構造的に難しい。

気づけば半年、1年と経ってしまい、「本当に見つかるのだろうか」と不安になる。

実は、こうした悩みは多くのクリニックで共通しています。

本稿では、クリニック移転が難航しやすい理由と、焦らず、でも止まらずに前へ進むための考え方をお伝えします。

■ 医療機関に適した物件は、本当に少ない

最初にぶつかるのが、「医療機関として使える物件の少なさ」です。

テナント情報は数多く出回っていますが、その多くは一般的なオフィスや店舗向け。

クリニックに必要な条件を満たしているものは、ごくわずかです。

医療機関では、給排水・電気容量・換気・バリアフリー・防音など、一般の店舗では想定されていない仕様が求められます。

加えて、診療科によって必要条件も異なります。

整形外科であればリハビリスペースや駐車場の広さ、小児科ならベビーカーや感染対策の動線、美容・皮膚科ならプライバシー性とデザイン性など――。

こうした条件を全て満たす物件は、そう簡単には見つかりません。

「いいかも」と思って内見に行っても、実際には水回りの位置が動かせない、重量物に対応できない等の理由で断念。

結果、「医療に適した物件が少ない」という現実に直面します。

■ 理想を追うほど選択肢が減るというジレンマ

多くの先生が移転を検討する際、これまでの経験を踏まえて「理想の条件」を細かく設定されます。

駅に近く、駐車場があり、1階で、視認性が高く、家賃も手ごろ――。

どれも納得のいく条件ですが、現実的にはそれを全て兼ね備えた物件はごく稀です。

また、昨今はドラッグストアや介護施設、フィットネスジム等が医療向けに適した立地を次々と押さえており、空きが出るタイミングも読めません。

理想を追求するほど、候補は絞られ、「もう少し待てばもっと良い物件が出るかも」と思っているうちに数か月が過ぎてしまう――。

この“理想と現実のバランス”をどう取るかが、移転の大きな課題です。

■ 「感情」がブレーキをかけることもある

もう一つ見逃せないのが、心理的なハードルです。

移転は単なる「場所の変更」ではなく、クリニックの歴史を次のステージへ進める大きな決断です。

長年通ってくださった患者さん、慣れ親しんだ地域、信頼してくれるスタッフ――。

それらを手放すような感覚に、どうしても迷いが生じます。

「今より悪くなったらどうしよう」「患者さんは来てくれるだろうか」「スタッフが通えなくなるかも」そんな不安が、無意識のうちに決断を鈍らせてしまうのです。

ただ、それは決して悪いことではありません。

慎重さは経営者としての責任感の表れです。

むしろ、迷う時間の中で「自分は何を大切にしたいのか」が少しずつ見えてくることもあります。

■ データと感覚のバランスがカギ

立地選びでは、「人通りが多い」「競合が少ない」等の感覚的な良し悪しに加えて、客観的なデータを活用することが欠かせません。

例えば、人口動態(高齢化率・世帯数・年齢構成)、駅やバス停の利用状況、他院の診療科分布や評判、交通動線・駐車場需要といった指標を確認することで、「なんとなく」ではない判断ができます。

とはいえ、数字ばかりを重視しすぎるのも危険です。

最終的には「この場所で診療したい」と思えるかどうか。

院長先生ご自身の直感もまた、非常に大切です。

■ 一人で抱え込まない。専門家との連携を

クリニックの移転は、不動産・建築・法規・経営――複数の専門知識が絡み合うプロジェクトです。

医療モールや開業専門の不動産業者、医療設計に詳しい建築士やデザイナー、行政や金融機関に精通したコンサルタントなど、信頼できるパートナーとチームで進めることが成功の鍵です。

特に、物件の段階から設計士が同行できると、「この構造ならリノベーション可能か」「法的に医療用途に転用できるか」などを早い段階で判断できます。

一人で全てを決めようとせず、“見極めの目”を複数持つことが、結果的に最短ルートになります。

■ 「焦らず、止まらず」。探し続ける姿勢が出会いを生む

物件探しは、焦っても進まない一方で、立ち止まると流れを逃してしまいます。

定期的に市場をチェックし、多少条件が違っても内見してみる。

不動産会社と連絡を途切れさせない。

こうした“動き続ける姿勢”が、良い出会いを呼び込みます。

意外にも、少し条件を変えた先に理想の物件が見つかることもあります。

物件探しは、「情報を待つ」より「動いて掴む」活動なのです。

■ 終わりに ― 「決まらない時間」もまた前進の一部

移転先がなかなか決まらないと、焦りや不安が募ります。

しかし、その時間は決して無駄ではありません。

「何を優先すべきか」「どんなクリニックにしたいか」――それを自問自答できる大切な期間だからです。

移転は“終わり”ではなく、“次の10年をデザインするスタート”です。

焦らず、でも止まらずに動き続ける。

その先に、院長先生にとって本当にふさわしい場所がきっと待っています。

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